第12話 どうする?黒々しんじゅ

タカヒロの冒険 どうする?黒々しんじゅ タカヒロと黒々しんじゅ
どうする?黒々しんじゅ

お腹が満たされると気持ちが和らぎ、口も軽くなります。

「あの恐ろしいネコの怪物君が本当に
 こんなにたくさんのご馳走を持ってきてくれたんだね…
 私は最初みたときからこれは良いネコだと思ったよ。
 こんなにたくさんのご馳走を…なんて素敵なネコなんだろうね!」

「…そ、そ…そですね……」

(確かひっくり返って気を失ったはずなのになぁ…
 ともあれ、現実を見失わない母上はさすがなのだ…)

「でもねタカヒロ…
 お前がこんなに小さいときから手塩にかけて育ててきた私だからいうけどね…
 その不思議な宝石の黒々しんじゅは捨てたほうがいいと思うよ…」

「えっ……ど、どうして…!?」

「お前とその宝石に命を助けてもらっていうのもなんだけどさ
 もう一度もう一度って何度もネコの怪物君を呼びだしてごらんよ
 頼みごとをしてそれが叶えられるとそれが当たり前になって
 今のとても幸せな気持ちはだんだん薄れ消えてゆくよ」

タカヒロはハッとして養母が先のことまで心配していることに驚きました。

「悪いことはつづくものさ。
 心の中にいつの間にか悪魔が住みついて私もお前も人が変わる。
 そして、2人ともおかしくなる…なんだかそんな気がするんだよ…」

(人が変わる……)

その言葉は見た目が普通の人と違うタカヒロにとって重いものでした。

「母上の言うことはもっともだよ…でもね、ボクは黒々しんじゅは捨てない。
 なぜなら、この宝石の中にいるネコを捨てると思うと心が痛いんだよ。
 いくら母上の頼みでもそれだけはどうしても聞けない、ゴメン。
 このネコの怪物君にふさわしい飼い主さんが見つかるまで
 しばらくどこかに隠しておくのはどうかな?」

「そうだね……隠しておく方がいいかもしれないね!
 というのは、高価な宝石をごまんと持ったあの魔法使いが
 その黒々しんじゅを手に入れるためはるばる遠い所からやってきて、
 タカヒロを殺してまで手に入れようとしたんだ。
 きっとものすごい価値があるんだよ。
 私たちが想像もできないような何かがさ…」

「ありがとう母上、じゃあさっそく隠してくる。
 絶対誰にも見つからないとっておきの場所があるんだ!」

タカヒロを養母は呼び止めました。

「何でも欲しいものが手に入るのは、災いと不幸を招くからね…
 絶対誰にも見つかったり取られないよう注意するんだよ!」

そういって養母はタカヒロを送り出しました。

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