「心臓は無事のようだが、肺がこれではまさに虫の息。時間の問題だな…」 ガオタイガーは高笑いをしたあと、会場の観衆に向けてサーベルをつきあげ勝利したことを示しました。 会場中からはもちろん、VIP席にいならぶ貴族や大臣からも割れんばかりの大きな拍手がまきおこります。
王様も立ち上がり、ガオタイガーの勝ちを宣言しようとしたときです。 倒れているタカヒロの手が輝き、手のひらがネコの肉球のようにこんもりと盛り上がったかと思うと、そこから目が眩むほどの強烈な閃光がはしります。 「わっ、まぶしい!………め、目が…!!な、何だ…!?」
こんもり盛り上がった手のひらの光によって人知を超えた特別な力がはたらき、死ぬ直前だったタカヒロの体は驚異的な自然治癒力によってみるみる回復していきます。 ボロボロだった肺があっという間に再生したかと思うと、深手を負った体の傷もすぐにふさがり元の状態に戻っていきます。
「な、なんだと!?……今まさに死ぬ寸前だったはず……バ、バカな!」 ガオタイガーの黒い瞳にはじめて戸惑いの色が浮かびます。 そして、会場の誰もザワザワして、はじめて見るこの不思議な光景に驚きました。 「ま、まさか…あの瀕死の状態から復活したというのか…どうなっているんだ…!?」
勝ち名乗りをあげようとしていた王様は目をみはりました。 (人知を超えた特別な力………その力はそれを得る者の器によって決まるといわれる………あやつは一体どういう力を授かったのか…ネコの肉球のように手のひらが盛りあがったと思ったら復活しよった………まったく得体が知れぬ…)