第71話 それぞれの1年間

あまりの痛みでタカヒロが何を言っているのか
さっぱり分からなかった敵の大将。鳩が豆鉄砲を食った顔をしました。

が、やがてタカヒロの微笑みに気づくと顔がロウソクのように白くなります。
そしてそのまま、兵士たちを率いて退却していくのでした。

敵の軍隊があわてて退却していくのを見届けると、
味方の兵士たちはたくさんのぶんどり品をうばって意気揚々と凱旋しました。
都に入ると町の人びとはよろこんで歓迎します。

王様もみずから出迎えにでて、たくさんの人たちの歓声のなかで
タカヒロをほめたたえお祝いの言葉をのべました。

ミア姫さまもタカヒロの無事と勝利を祝って、
とても喜んでくれました。
賛否両論だったタカヒロの評価は、
この戦いによってガラリと変わりました。

タカヒロのとりつくろわない人柄と、
どんなときもマイペースなことまでが評価されるように。

タカヒロの方はこんな感じで1年間を幸せに過ごしましたが、
あのライオンから産まれた魔王使いはどうなったかというと、
タカヒロを仮想世界に閉じこめたあと、
一人大きなほら穴にとじこもり自分以外の人間に
不幸と災いがふりかかることを一心不乱に念じておりました。

時間の流れをお金や財産にかえる黒しんじゅを手に入れようとしたけど、
水の泡になったことを思いだすたび悔しさがつのり顔が変わってしまうほどでした。

(俺の不幸を何万倍にもして俺以外の人間どもに味わせてやる!
 苦しみにもだえみんな死んでしまえばいい!!
 人間が幸せや喜びを2度と味わえぬ世界にかえてやる。
 …必ず…そう必ずな……)

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