「わたしはあなた様の父より宝石取引の保護をうけ、このように立派な宝石商となることができました。そこで、あなた様とタカヒロ王子の末永きご多幸を願い、わたしにできるもっとも良いプレゼントは何かと考えておりました…宝石の目利きではだれにも負けません。
王家のコレクションの中にいわくつきの宝石や呪われた宝石があれば、わたしが責任をもって処分させていただとうございます。いかがでしょう?見目麗しい姫さま。夫であるタカヒロ様はたいへん評判も良く、王となればますますこの国は繁栄することでしょう。たかが宝石かもしれませぬ。
しかし、それによって国が滅びた話もございます。どうぞわたしにできる最高のプレゼントを受け取っていただきとうございます」 タカヒロはミア姫さまと結婚するために黒しんじゅを差し出しましたが、そのことをミア姫さまは全く知りません。 また、黒しんじゅが富・お金・財産をうみだす宝石であり、かつこの世界を支える大切なマスターキーであることも知りません。
ミア姫さまは宝石商の言葉をきいて、つい王家秘蔵の宝石コレクションルームに案内してしまいます。 「ほほう、さすがはこの世で並ぶ者がない偉大な王家、他国のコレクションとはまるで次元が違いますな…」 宝石商は大いに感心しながらも、その目は何かをさがしているようでした。
姫さまは父が重責から解放されること、夫であるタカヒロが良い王になること、そして国のみんなが幸せに暮らせること、ただその願いだけでした。 宝石商はあたりの宝石の輝きとはまったく異なる黒い輝きの黒々しんじゅに目をとめ、姫さまの前でおおげさに騒いでみせました。