「こ、っここの宝石は凶をこえた最凶の輝きをはなっております。ご覧ください、まわりの宝石の光を吸いとってその光で黒く輝いております。黒い輝きなどこの世に存在しません。こんな光をあびていれば必ずや災いをもたらしましょう。ただちに、この宮殿から遠く離れたところにお捨てになりませ」
「しかし…」ミア姫さまは自分で判断できずに戸惑います。 「さもないとこの国は近々衰退をはじめ、いずれこの黒い光のように存在しないものになるでしょう」 小さな悲鳴をあげると、ミア姫は黒々しんじゅを見つめました。 (結婚適齢期に入り聖地巡礼の旅にでる前には、このような宝石はなかったのに…)
ミア姫さまは宝石商と相談すると、ついにこの黒々しんじゅをコレクションから取り除くことにしました。 宝石商は黒々しんじゅをおそるおそる手にすると、あいさつもそこそこにすぐに部屋を後にします。 魔王使いは長年さがし求めていたファーストマスターキーの黒々しんじゅをついにゲットしたのです。
宮殿を出るとすぐにふところ深くねじ込み、一目散にかけだし都のはずれまできました。 人っ子一人見あたらない寂しい荒野にくると、日が暮れるまでじっと待っていました。 やがてあたりが暗くなると、魔王使いは黒々しんじゅを懐からとりだしこすり始めます。
「旦那様のペット、ネコの怪物君ですニャ~。ニャンでもご用をおいいつけください」 魔王使いは誰もいないことを確かめると、大声で高らかに笑いました。 「あのタカヒロの妃であるミア姫を宮殿の中からつれだし、砂漠の中にあるオアシスまで運んでもらいたいのだ。もちろん、この俺もいっしょにな。おまえはこの世のすべての富や財産を生みだすネコ。それくらいわけなかろう」