部下の兵士や大臣たちがとり乱し、宮殿の中がハチの巣をつついたような大騒ぎになっているのに気づかれた王様は、儀式を一時中断し自ら部屋を出て部下に問いただしました。 「な…なんということ…ミ、ミアが…!?」
亡き妻ロクサーヌの部屋にあわててかけつけると、ミア姫さまが中から閉めたカギを無理矢理開けさせました。 「ミア!どこだ?…どこにおる!?」 窓と扉のすべてにカギがかかり、どこからも部屋に出入りした形跡はありません。
何が理由かもわからず、一切の手がかりもないまま、ミア姫さまは部屋の中から忽然と消えていたのです。 王様は身もだえして苦しみ、娘がいったい今どこで何をしているのかと思うと、身も心も引きちぎられるようでした。 すぐに家来や大臣を呼び集め、ミア姫がいなくなるまでのことを詳しく報告させました。
王様は大臣にたずねました。 「それではその方は、タカヒロにこのことはまだ伝えてはおらぬのだな?」 「はい、さようで…タカヒロ王子は自室に一人でおられますが、まだ何もごぞんじないかと…」 王様は声を荒げました。 「であれば、すぐにタカヒロをここへ連れてまいれ!余が直々にタカヒロに聞こう。
それまでは一切何も伝えてはならぬ」 怒り狂った王様はそう叫ぶと、配下の兵士にタカヒロを捕えるための準備をととのえさせました。 「タカヒロ様、どうぞおゆるしください。私たちはまだ王様のご命令にそむくわけにはまいりません。ただ、そのいいつけのまま動く他ないのです」