第92話 そびえたつ巨人

おそらく頭が良くズル賢い奴がどんどん寿命をのばす。知恵をつけさらに強い支配力をもつようになる。それこそが望む未来。生きるか死ぬかの弱肉強食の世界。愛や平和ではなく恐怖と絶望しかないのだ。それこそまさにユートピア。一刻も早く実現させ、モンスターがモンスターを生み、さらにそれを上回るモンスターが生まれる。この永遠に地獄へ続く階段を作るのだ。

寿命のプログラムを書き換えることでそれが実現できる。それこそ夢でありロマンだ。それこそ俺の望み。ワクワクすると同時に恐ろしくもある…たまらん…まさに夢のようだ…) 魔王使いはミア姫の死とひきかえに、ついに第二のマスターキーを手にしたのでした。

愛と性のパワーによって魔王使いの体はみるみる大きくなってゆきます。 ついにはオアシスにそびえる御殿の壁や天井をつきぬけ、砂漠一帯をみわたせるほどの大巨人になったのでした。 「フハハハハハ!!タカヒロどうだ?…俺様の恐ろしさを今ごろ分かっても、もう遅いぞ」

巨人となった魔王使いは視界をさえぎる雲をはらいのけると、 「いよいよ残るはあと1つ…最後のマスターキーだけだ!」 山のように大きくなった体をかがめ、地上のいたるところをくまなく探しはじめました。 天井がくずれガレキが土砂降りのようにふる中、タカヒロは呆然と立ちつくことしかできません。

ミア姫を守れなかったことと血を失っていく彼女から自分の心が離れたことにショックを受けていました。 (今までの気持ち、ミア姫に感じていたものは一体何だったんだろう!?…ただミア姫の王家の血が好きだったのか?それで大切にしようと思ったのか?)

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