96話 ミア姫死す

離れていかないようにタカヒロがミア姫を抱きしめると、彼女のタカヒロに対するあふれる想いとぬくもりが、体全体からほとばしり伝わります。 「…どうして……どうしてこんな…こんなに…」 何度もいいながら、声がふるえ自分の中にミア姫が溶けていくのを感じました。

涙がとめどもなくあふれほほを伝い、ぬぐってもぬぐっても止まらないのでした。 「…ミア …ア……ミアーーーーーー!!!」 生まれてはじめてタカヒロは、自分の想いを叫けぶことができたのです。実の親の顔をも知らず、どこで生まれたかもわからない。そんな自分を拾って育ててくれた養父母。優しさに応えたかったのですが、いつも引け目を感じていました。自分でも思うようにならない。そんなとき出会ったのがネコでした。自分の親とか気にせずいつもノビノビ自由に生きていて、いつの間にか夢中になっていました。自分は人を愛せないと思っていたタカヒロ、唯一心をときめかせ本当に好きになったのがミア姫さまだったのです。

目をあけるとミア姫はタカヒロに抱きしめられ、眠るようにして亡くなっていました。

ミア姫の体からしたたる血を受けたタカヒロはみるみる大きくなります。 遺体は輝く粒子になって指から風となって去ってゆきました。タカヒロは怒りの巨人となって砂漠に立っていました。 彼女から託された力で何が何でも魔王使いを倒し、この世界を守ることを誓うのでした。

最下層の光り輝く粒子をていねいに掘りすすめていた魔王使いの指先に何かがふれます。 「こ、これは…!?」 掘りだしてみると、それは黄金色に輝く巨大なたて琴でした。 魔王使いの大きな手にもずっしりくるほどの大きなたてごとは、一定のリズムにのって美しいメロディーを奏でています。

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