翌朝早く、黒真珠をきれいな布でつつむと
養母ははりきって家を出て王様のお城に向かいました。
謁見の間につきしばらくすると大臣や貴族たちが集まってきて、
身分の高い人たちでいっぱいになります。
やがて王様が姿をあらわすと、なみいる人々はすぐに跪いて頭をたれました。
シーンと静まる謁見の間王様が声をかけると
それぞれの身分に応じて御前に呼びだされ、
ようやく謁見の機会をいただけるのでした。
王様の前に人びとが呼びされ陳情をしていくのを見ていたら、
養母は『次は自分の番か』と胸がドキドキしてきました。
誰よりも早くきたのですが、お昼がすぎても名前は呼ばれません。
取り残されたままじっと待っているうちに謁見は終わり、
王様は奥へさがっていかれました。
このようなことが3か月ほど続いたある日、
年配の女が毎日腰をかがめて朝早くお城に来ているのを
王様は気になって大臣にたずねます。
「あの女は一体何のために毎日早く来ているんだ?
ニワトリも鳴かない夜明け前から…」
毎朝くる女の目的がわかない王様に大臣が答えます。
「おそらく出来の良くない旦那かドラ息子の不平不満でしょう。
私が対応いたします」
「しかし…どうも気になる。今度来たらその女を私の前に通すように」
今日もまたお城の門がひらくとたくさんの人が謁見の間につめかけました。
王様はずっと気になっていた女の話を聞きたかったので、
ずぐに連れてくるよう命じます。
養母は王様の前に跪くと床に頭をこすりつけてお礼を述べました。
「女よ、そちは毎日ここへ来ている。
一体何の用だ?おぬしの望みを申してみよ」
養母は緊張のあまり声が出ません。
王様は自らグラスに水をついで女に飲ませました。
「さぁ申してみよ。緊張するのも無理からぬこと。
はじめてのこと、失礼があっても構わぬ」
「ひ…ひれい しゅりこんじょうの…え~…
きいせおのいおのおつかれさましゅしゅこ。ぶんめいか」
養母は緊張のあまり自分でも何を言っているのか分からないことを
王様にたずねてしまいます。