さっそく次の日、魔王使いはお城までやってきました。そして、取つぎの者に高価な宝石のワイロをわたし、王との謁見を申しでたのです。 「私は王様にたいへんお世話になっている宝石商です。このたび王様がご退位されるときき、はるばる遠い所から感謝とお礼の品をお届けするためにやってまいりました」
ところが、王様は王位をタカヒロにゆずる儀式にのぞむため、初代の王がきめた掟にしたがい水しか口にできない絶食の期間にすでにはいっており、面会謝絶のうえ自室から一歩も外にでることはできなかったのです。 「では、私どものような直接会って感謝を伝えたいものはどうすればいいのです?」
「今は王子であるタカヒロ様も同じく正式に王位を受け継ぐため、自室にこもっておられる。代わりにミア姫さまが代理として政務をつかさどっておられます」 受付の兵士から珍しい申し出があるときいたミア姫さまは、抱いていたネコをおろすと、王に代わり自ら宝石商にお礼を伝えることにしました。
自室を出ていかれるミア姫さまを見送った女性は、まさかそれがミア姫さまのお姿をみる最後になるとは思いませんでした。 「姫さまはいつものように部屋をでる前に鏡で自分のお姿を確認して出ていかれました」 ミア姫さまは、王にたいへんお世話になったという男の話に耳をかたむけていましたが、
男が急に「このお城にあるはずなのですが…お城にある宝石を全部調べさせていただけませんか?」とおかしなお願いをしてきたので困りました。 男から献上された高価な宝石で、ミア姫さまはすっかり男のことを父の知り合いだと信じて、特別に王家以外立入禁止の秘蔵コレクションルームに案内します。