そういうと魔法使いはタカヒロの額をなでながら呪文を唱えました。
「痛いか?」
「痛くはないけど…あれ?暗闇の中がよく見える!」
「そうだ、その調子で闇に目をならすのだ…
よいか、ここからはお前1人でやらないと全て水の泡になってしまう」
そう言うと、魔王使いの手に力が入りました。
「心眼を使ってさっきの化けネコを一刻も早く見つけだせ!
そして、ネコを見つけたらしっぽをつかんで絶対に離すな!
振り向いてネコがお前に襲いかかってきたら、
とにかく何でもいい正直に罪を3つ告白しろ!」
タカヒロは心の目が開いていくのを感じると、
闇の中にけむりのようにただよっている不気味なネコ見つけました。
そして、言われた通りにやってみたのです。
闇の中にネコを見つけたタカヒロは、魔法使いにいわれたとおりに
ネコのしっぽをサイヤ人のしっぽだと思って力いっぱい握りました。
なるほど、ネコはピンポン玉のように飛び上がると、
タカヒロをにらみつけ、大きな口を開け襲いかかってきました。
タイミングを見計らってタカヒロはこれまでに犯した3つの罪
①ネコにきゅうりを食べさせようとしたこと
②ペナントレースで優勝していないのにネコを胴上げしたこと
③せっせっせのヨイヨイでネコを困らせたこと
以上を正直に告白しました。
そして、気がつくと大きな時計の上にいました。
見ると、時計は螺旋階段のように下につづいています。
時計の周りは大きな渦がとり巻いていて、
足を滑らせたら助かりそうにありません。
「よ~し!よくやったぞ、タカヒロ!
さぁ、ここからが本番だ。大丈夫か…まずリラックスしよう」
タカヒロは心を落ち着かせると、おじさんの声に集中しました。
「いいか、時計から階段が時計回りにくだっている。
すべて降りおわると4つの部屋がある。
しかしどの部屋にも入ってはならない」
魔法使いは語気を強めて言いました。
「よ~く階段を見ろ。一番最後の階段はシールみたいにめくれる。
そこをめくってみろ。そうすれば『裏階段』へつづいているはずじゃ。
そこをどんどん降りてゆけ。
言う通りにしないとネコの口が閉じてそこから出られなくなるぞ!」
タカヒロは分かっていると軽くうなづきました。
「よし! 階段をくだった所でようやく泉の前にでる。
お前が心から願えば泉からは水があふれだし、
その水が渦となってお前を歓迎する。
泉の中には時間の方程式があって、
お前をその式の中に代入しようとするが、とりこまれてはならない。
水の流れがお前のために必ず補助線を引いてくれる。
それまでそこでじっと待っておれ。
補助線が引かれたらそれにしたがって進むと、
時間をお金や財産に変える黒々しんじゅがある。
それをとってこぼれ落ちないようにポケットに入れて持ってきなさい」
こういって事細かに指示を出すと、タカヒロは頭がいっぱいになって、
最初から最後まですべて忘れてしまいました。
それを予想してか、魔法使いは首から下げていたUSBメモリを転送して、
仮想世界の中にいるタカヒロの首にかけてあげました。
「このメモリはただのメモリじゃない。
体のどこでもいい差し込んでちょっと回すと
カチッと音が鳴って頭の回転が信じられないほど速くなるすぐれものだ。
いいから、体のどこかに差し込んでみろ。
お前はもう心眼をひらいて、あと頭さえ賢くなれば怖いものなしなんだ!」