長い沈黙がつづいたあと、王様はようやく口を開かれました。 「そうか……… タカヒロよ、よく聞け!娘が生まれた後しばらくして妻を失った。もうこれ以上大切なものを失うのは耐えられぬ。幸福を授かると、必ず不幸がおとずれる。余はこのたび、お前という立派な後継ぎを得た。
その代償として娘を失うのか…タカヒロよ、娘を連れ戻してくれぬか?余はどうなってもよい。この命などこれから先の娘の長い人生を考えればなんでもない。娘といっしょでなければ、2度と余の前に顔を出すな。そしてもし娘を連れて戻らなければ、お前もそしてお前の養母の首をはね、国中のネコを処分してくれるぞ!」
王様にたいしタカヒロも真剣に応えました。 「かしこまりました。ではどうぞ40日の猶予をお与えください。その間に姫さまを連れ戻せないときは首をはねるなりお気のすむように…」 「この私から逃れようなどとは夢にも思うな。たとえ国外に逃げようとも、必ずひっ捕らえてみせる!」
町の人たちはタカヒロが姫さまをどこかに隠す人でないことはよく分かっていました。 しかし、お城や宮殿に住む偉い人たちは、自分たちの地位や権力のために利用できる価値がなくなったタカヒロのことをすぐに見捨て、悪い噂を流し二度とお城に戻って来れないようにするのでした。
タカヒロは思いがけない災難にめんくらい丸二日間、姫さまがどこにいるのか探すのにどうすればいいのか必死に考えましたがダメでした。 それで国中をくまなく探してみたものの、やはり見つけることができません。 (黒々しんじゅがあれば、ネコの怪物君に頼んですぐに見つけることができるのに…)