ミア姫さまは父である王様やタカヒロから引き離され、宝石商に化けた魔王使いに捕らえられてからというもの、寂しさと不安でずっと泣いていました。 もう何日も締めきった部屋にいたため、その夜ふと外の景色を見たくなり窓をあけました。月明かりの中ふと下を見ると、すぐ近くの木陰にネコのように体を丸めスヤスヤ眠る人を見つけたのです。
部屋の下の木陰で眠る人を見つけたミア姫さまは、寝相を見て誰かだかすぐに分かりました。 あわててバルコニーに出ると「タカヒロ~!」と叫びました。 ふだんいくら起こしてもネコのようにすぐに起きないタカヒロでしたが、このときばかりはパッチリ目をあけるとあたりをキョロキョロ。すぐに立ち上がったのです。
「ここよー!」 うれしさいっぱいでミア姫が手をふると、タカヒロはすぐに姫に気づいてバルコニーの下に駆けよってきました。 ミア姫さまの目にはタカヒロがまるで水の中にいるように見えました。それはタカヒロも同じでした。 「さぁ、早く裏門から入っていらして!今なら魔王使いはいませんから」
タカヒロが飛ぶようにお城の裏にまわると、姫さまに仕える侍女の一人がさっそく門を開けてタカヒロを迎え入れてくれました。 「ミ、ミア……無事でよかった…」 タカヒロは久しぶりにみる姫の瞳が大きくくぼんでいることに気づき、ミア姫も不安と絶望の中で苦しんでいたことを感じます。
「ミア姫、ご…ご無事で本当によかった…でも、これからは一刻を争います。少しも時間をムダにはできませんよ」 ミア姫は胸の前で両手を合わせると、 「存じております。そして、あなたとならきっと乗りこえられることも…」 タカヒロは誇らしげにうなづきました。