おなかがへってノドもカラカラ。そのうえ何も見えないまま、
やっとのことで我が家にたどりいたタカヒロ。
「ひ、ひどか目に…あわ…された! 母上…た…すけて…」
かすれる声をしぼりだすとそのまま気を失いました。
行方不明になって心配していた養母は、
タカヒロの変わり果てた姿を見てビックリ仰天!
(どうか女神様お助けくださいませ!!)
まず水をゆっくり飲ませると、
それからおかゆを少しずつ口に運んであげました。
タカヒロはようやく声が出るようになると、
母上にありがとうと感謝を伝えました。
そして、次に何を言い出すかと思えばなんと
「ネコは?」と言い出したのです。
「母上、ネコたちはどうしてる?
しばらく会ってないからさ……みんな元気だといいんだけど…」
これにはさすがの養母も開いた口が塞がりません。
(ね、ネコ!?こんなときにかい???)
「ほら!お前にもらったネコだよ…」
養母がタカヒロにネコを渡すとタカヒロは少し元気になりました。
「母上…ここに来たおじさんは全くひどい人でした。
ボクの目を閉じて接着剤でくっつけると、仮想世界に閉じ込めたんだ。
まったく信じられない人だったよ。
それにね仮想世界に入ると、いきなりオナラをやりだしてさぁ…
それが10分も続くんだ!あまりの下品さにボクはもう
気が変になりそうだったんだ。それでね………」
タカヒロはおじさんとのことをすべて話し終わると、
養母からこんなことを言われたのです。
「タカヒロ…お前がいつか…そういう目に
あうんじゃないかとずっと心配だったんだ。
何せお前は他の人とほとんど口をきかないし、
いつも何を考えているか分からないだろう…
そのうえ頭はツルツルでさ、見た目が人とずいぶん違うじゃないか
それでもね(ニッコリ)お前を見ていると、不思議と
私はおもしろくて楽しくて幸せな気持ちになるんだよ。
お前がネコを好きなのと同じくらい、私もお前のことが好きさ。
だから、あんまり無理はしないでおくれよ…」
タカヒロは目を閉じたままでしたが、
熱いものがこみあげてきて、目が痛くなってしまいました。
あくる日、養母は接着剤を溶かすお薬を見つけてくれました。