王である父にも心配をかけまいと、ほんとに心からみんなの幸せを誰よりも願ってきた人なんだ。だからボクみたいにネコが好きなだけで他に何もない者を好きになってくれて…ボクは…ボクは…」 魔王使いが自分の寿命と代償に呼びだした死神は、亡くなった人の魂を鎌で刈り取りどんどん大きくなってゆきます。
「ボクはこいつが大きくなれるだけなるのを待つよ。そして倒す。魔王使いともどもこなごなにしてやるんだ!」 タカヒロが自分の知っている昔のタカヒロではないことを理解した養母は、説得をあきらめるとニコリと微笑みどこかへ消えました。
「またせたなタカヒロ、これが最強にして最悪の死神だ。ハッハッハッハッ」 「この世界が消えてしまうまで時間がない。はやくカタをつけよう」 死神は大鎌をかまえると、構える隙も与えず一気に振り下ろしました。
寸前のところでかわしたタカヒロでしたが、鋭い鎌の先が耳をかすめます。耳から血が吹き出て、イヤリングのようにしたたり落ちます。 「ハァ…ハァ…どうだ?俺の寿命のほとんどをつぎこんだ死神の力は…まだまだこんなものではないぞ」 「そうでないとガッカリだ。ミアの弔いには物足りなさを感じる…」 魔王使いは苦い顔をして口をゆがめました。
「お前が死ぬ前にほめておいてやる。どんな相手に対してもひるまず闘う姿勢は見事だ。どんな奴でも殺せる俺の呪術がきかないのだから、お前は何か得体のしれない特別な存在に見守られているのだろう…だがしかし、それもあとわずかで終わる。…あと1分というところか?