そのときタカヒロの前に立つ相手の顔を見た王様は、手がふるえおもわず望遠鏡を落としてしまいました。 望遠鏡は物見やぐらをコロコロころがり、はるか下の石垣に落ち割れてしまいました。 「あ…あの男…ロクサーヌとの結婚をめぐって余と闘った男だ
あやつは…あまりにも邪悪な人間だったため確かに余の手で首をはねたはず。まさか、生きておったとは…一体どうなっているのだ!?」 あえぐような息づかいがおだやかになり落ち着いてくると、元気になった魔王使いはタカヒロに言いました。
「俺は若いころ、お前と同じように王家の娘、ロクサーヌという女に結婚を申しこむため、たくさんの宝石をあつめて試練にいどんだ。お前も知っているだろう。第二の試練で三途の川の水をのめば特別な力をさずかることを…俺は期待に胸をふくらませ水をすべて飲んだ。だが何の力も得られなかった。
そして、最後の試練で俺は殺されてしまった。ところがふしぎなことに殺されて3日後、死んだはずの俺はライオンから生まれ出たのだ。死ぬ前の元の姿のままでな…俺が得た特別な力は、死んでもう1度生まれ変わることができるものだったのだ!お前の大事な女を今から生き返らせてやるぞ、喜べタカヒロ!」
そういうと魔王使いは呪文を唱えはじめました。 「シュリョコンジョウノ…ジョキイセオ…ノイオノオカレツカン…コツダカイ……」 すると、魔王使いの影が大きくのびてその先に目と鼻と口があらわれたかと思うとたちまちドクロになったのです。