「ボクからもらった血でもいったんあなたの体に入ったらもうボクの血じゃない。最も大事な場面でミスったな、魔王使い」 タカヒロは悲しそうな顔をすると、亡くなった魔王使いの恨みと苦しみのこもった目をそっととじました。 世界の崩壊が加速するなか、タカヒロは竪琴をもとに戻す作業に戻りました。
「今ならまだ間に合うかもしれない。竪琴のメロディーが完全に止まってから5分もたっていない。たのむ!」 タカヒロと別れてようやくあの世にやってきた養母でしたが、そこでたいへんなことが待っていました。 あの世にいる魂がまるでシャボン玉がはじけるように消えていたのです。
さらにあの世までも黒い渦にどんどん吸い込まれ、何も見えない何も感じない無になってゆきます。 (あっちの世界だけじゃない、こっちの世界も鏡写しのように同時に消滅してゆくんだわ…タカヒロは竪琴をもとに戻そうと頑張っているけど、
本格的に消滅がはじまったらもう誰にも止められない。体はボロボロだし立っているのもやっと…でも、いそいでタカヒロ!早く竪琴を戻さないと、みんなどんどん消えて何もかもなくなるわ!) タカヒロはようやく竪琴を地中に埋め戻すことができました。
竪琴のメロディーは止まったまままったく動く気配はありません。 「たのむ、もう1度動いてメロディーを奏でてくれ!」 指で弦をなでたりはじいてみたりしましたが無反応。 「だめだ!どうして動かないんだ!ちくしょうー!!」