(…ミア…君は、もしかして何もかもわかっていたんじゃ…最初からこうなることも…君はいったい…) (そうじゃないわ…わたしはみんなのためにできることをしているだけ。最後までみんなのためにお仕えする。そして、あなとならきっとどんなことでも乗りこえられる…)
豊かな実りの季節をおもわせる芳醇なメロディーのあとには厳しく凍てつくおごそかなメロディーが奏でられ、次にはあたたかく生命の息吹を感じられるあたたかなメロディーがつづき、最後に陽気で楽しく心おどる躍動感あふれる野生のメロディーが奏でられました。
黒い渦にのみこまれてゆく世界。2人が奏でるハーモニーもその中にのみこまれ無に帰ってゆきます。 タカヒロの体は闘いではげしく消耗し、指を動かすのもやっとというほどボロボロでした。 (ミ、ミア…もうダメだ……た、竪琴をささえられない…)
ところが、いくら呼びかけてももうミアの声が返ってくることはありません。 黒い渦はタカヒロの心の中からミアを吸いとって消していたのです。 1つになって奏でていたミアがいなくなると、メロディーも完全に止まってしまいました。 (ミアが…消えてしまった!?)
さきほどまで感じていたあたたかさやぬくもりが消え、燃えつきた灰のようにすっかりなくなっていました。 タカヒロは竪琴をもう支える力も気力をなくし、その場にへたりこむと何もかもが終わったことを悟りました。 「…終わったんだ…すべて……ミアも……う…奪われてしまった…」