養母は買ってきたお薬を、おそるおそるまぶたの上にぬってあげました。
すると、タカヒロの目は開き元に戻ったのです。
「タカヒロ…ごめんね。お薬を買うのにこんなに時間がかかってしまって…
もう食べるものもないし、家の中のものもすべて売り払って…
残っているのはお前にもらたそのネコだけだよ…
でも、もう少しの辛抱だよ!私がもう1つ仕事を増やして、
夜の工場に働きに出るようになったら…そのお金で
お前が好きな食べ物をたくさん買ってあげるからね!」
タカヒロは満面の笑みを浮かべて、
「母上!大丈夫、僕に任せて!いい考えがるんだ」
そういうと、養母にズボンをもってきてとお願いしました。
「この中に珍しいものがあると思うんだけど…」
タカヒロは養母がもってきてくれたズボンのポケットに手を入れます。
ポケットの奥には穴があいていて、そこに人差し指を入れ中のものを出すと、
ネコの毛にまじって大きな黒々しんじゅが出てきました。
「なっ、何だい…この黒い宝石は!?こんな大きなの見たことないよ…」
養母はタカヒロのポケットから出てきた黒々しんじゅを、
すっかり子どものおもちゃの偽物だと思いました。
それでも期待しないわけにもいかないのか、
ネコの毛をとってきれいな布で軽くこすってみました。
「少しでも…高く売れるといいんだけどね…」
その瞬間、部屋いっぱいに煙がたちこめ
中から恐ろしいネコの怪物があらわれたのです。
「ご用は何です、奥さま?
ミャーはあなたのペットで黒々しんじゅをお持ちの方になつきますにゃ。
どうか優しくなでてね…きっとお役に立ちますにゃ……」
養母ははじめてみる大きなネコの怪物君に肝をつぶし、
恐ろしさのあまり腰を抜かしました。
「タ…タ…タカヒロ…」
そういうや、バタンとそのまま後ろに倒れてしまったのです。
ところがタカヒロは、仮想世界でこのネコに会ってたので、
フレンドリーに話しはじめました。
「やぁ先日はどうも…元気だった?
あのさ…ボクたちお腹すいて死にそうなんだ…
何か美味しいものを持ってきてくれないかなぁ?」
ネコの怪物君は「ミャ~ン」と、一声なくとすぐに影の中に消えました。